KaiOS といえば,注目されつつも開発中止となった Firefox OS のコードベースを流用したスマートフォン向け OS である。KaiOS 自体はプロプライエタリのものであり,Google の影響が強い企業の製品でもあるので特に興味はないのだが,HTML5 ベースのアプリケーションの普及という点では注目に値する。
インドで目覚ましい普及を進めているのは JioPhone (LYF F220B) という機種であり,大手キャリア「Reliance Jio Infocomm」による戦略的な価格設定により,日本円でたった1000円程度の699ルピーで販売されているらしい。インド製ということであり,政治的・政策的な背景もあるのかもしれない。
ネット上に詳細なスペック情報が出回っているが,Cortex-A7 のデュアルコアに 512 MB の RAM というスペックらしい。ディスプレイも QVGA と,スマートフォンとして実用的なスペックではないが,途上国では今なお需要のある 2G のフィーチャーフォンの代替としては,かなり高性能である。
実のところ,中国製の Android スマートフォンも安くなっている。先進国向けの通販でも30ドルあればクアッドコアで RAM 1GB の実用的なスマートフォンが手に入る時代である。また,東南アジアなどでは,比較的貧しい層であっても無理をしてでも一般的なスマートフォンを選ぶ傾向がみられる。単なる実用品ではなく,ある種社会階層を示すアクセサリとしての性格も帯びており,その意味で「せめて OPPO や VIVO」という消費者心理は合理的となっている。このことを考えれば,Android のローエンド市場を KaiOS が食う考えるのは早計だろう。
しかし,フィーチャーフォン並みの価格でスマートフォン並みの機能を持つ端末が量産されるに至ったことで,フィーチャーフォンとスマートフォンの垣根はついに溶けてゆくのかもしれない。